当協議会は、EnergyTagのアジア太平洋地域統括責任者(Head of APAC)であるShailesh Telang(シャイリッシュ・テラン)氏と、最新情報について意見交換を行いました
当協議会は、EnergyTagのアジア太平洋地域統括責任者(Head of APAC)であるShailesh Telang(シャイリッシュ・テラン)氏と、最新情報について意見交換を行いました
アジア太平洋地域におけるアワリーマッチング実装
一般社団法人アワリーマッチング推進協議会では、2025年12月8日(月)に、EnergyTagのShailesh Telang(シャイリッシュ・テラン)氏と、オンラインによる情報交換セッションを実施しました。
Shailesh Telang氏は、EnergyTagにおいてアジア太平洋地域(APAC)全体を統括する責任者(Head of APAC)を務めており、日本、インド、東南アジア、オセアニアなどを含む広範な地域での制度動向、市場改革、企業の電力調達実務に精通した立場にあります。
EnergyTagの中でも、各国の電力制度や成熟度の違いを踏まえ、現実的なアワリーマッチング導入の道筋を描く役割を担っており、GHGプロトコルScope 2改訂に関するパブリック・コンサルテーション対応においても、APAC地域の意見集約と発信を担う重要なポジションにあります。
本セッションは、Scope 2ガイダンスのパブリック・コンサルテーション開始を受け、アジア太平洋地域における最新動向の共有と、日本の現状・課題認識を相互に共有することを目的として開催されたものです。

2025年10月20日より、GHGプロトコルは改訂版Scope 2ガイダンス案に関するパブリック・コンサルテーションを開始しました。今回の改訂案では、
・時間単位(またはそれに近い粒度)での電力需給マッチング
・物理的に接続されたグリッドを前提とする供給可能性(Deliverability)
・規制供給やデフォルト供給を整理する標準供給サービス(SSS)
・残余ミックスの厳格化およびフォールバックとしての化石専焼係数
・粒度の高い、公開性のある排出係数を優先するデータヒエラルキー
といった、電力調達・会計実務に大きな影響を与える論点が盛り込まれています。
こうした中、EnergyTagはAPAC地域の関係者向けに、改訂案の要点と論点を整理したガイドブックを作成し、意見提出を促しています。本協議会としても、アジア太平洋地域全体の議論動向を把握すると同時に、日本の制度・市場特性を踏まえた実務的視点を国際議論に還元することが重要と考え、本セッションを企画しました。
セッション前半では、Shailesh Telang氏より、EnergyTagがアジア太平洋地域で取り組んでいる主な活動について説明がありました。特に強調されたのは、アワリーマッチングや24/7 CFEを単なる理想論に終わらせず、各国・各市場の実情に応じた形で実装可能なルールとインフラを整備することの重要性です。
APAC地域では、電力市場の自由化状況、証書制度の整備度合い、系統データの公開レベルが国ごとに大きく異なります。そのため、欧米で想定されている前提条件をそのまま当てはめるのではなく、段階的・現実的な導入経路を描く必要があるという認識が共有されました。
また、GHGプロトコル改訂案において注目されているGCEAC(Granular Certificate / EACにおける二重計上防止の考え方)についても説明があり、証書・属性情報の粒度が細かくなるほど、制度設計とデータ管理の重要性が増す点が指摘されました。
協議会からの日本側の現状共有
後半では、協議会側から、日本における電力制度・再エネ証書制度の現状について報告を行いました。日本では、非化石証書制度やトラッキング付き非化石証書など、一定の属性管理の仕組みは整備されている一方で、時間情報の粒度やデータ公開の在り方については、今後の検討余地が大きいことを共有しました。
また、発電事業者・小売電気事業者・需要家・制度当局といったステークホルダー間での合意形成が不可欠であり、一足飛びに義務化するのではなく、実証と対話を積み重ねながら導入していく必要性が、多くの日本のステークホルダーが持っている認識として説明されました。
本セッションでは、以下の点について特に踏み込んだ意見交換が行われました。
- アワリーマッチング導入における現実的なロードマップ
- GCEACを含む二重計上防止の考え方を、各国制度にどう落とし込むか
- オープンソース型データベースの活用可能性と、その信頼性確保
- 国際基準と国内制度のギャップをどう橋渡しするか
これらの議論を通じて、アワリーマッチングは「技術的に可能かどうか」だけでなく、「誰が、どのデータを、どの責任で管理・公開するのか」というガバナンスの問題であることが改めて確認されました。
今後に向けて
今回のオンライン情報交換セッションは、EnergyTagと日本側ステークホルダーとの間で、認識をすり合わせ、相互理解を深める重要な機会となりました。協議会としては、本セッションで得られた知見を会員にフィードバックするとともに、今後のパブリック・コンサルテーションへの対応や、国内外での議論深化に活かしていく予定です。
アワリーマッチングの実装は、単なる制度対応ではなく、日本の電力システムと脱炭素戦略の質を問う取り組みでもあります。引き続き、国際的な動向を注視しつつ、現実的で持続可能な道筋を模索してまいります。