当協議会は、国連24/7CFE年次総会に参加し、日本のステークホルダーとしての意見表明を行いました。

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国連24/7CFE年次総会

2025年9月25日に、ニューヨークでの国連総会第80回会期(UNGA80)の公式サイドイベントとして、「24時間365日カーボンフリーエネルギー(24/7 CFE)による公正なエネルギー転換の推進」と題したセッションが開催されました。本セッションは、国連経済社会局(UN-DESA)が主催するSDG7アクションフォーラムの一環として、SEforALL(Sustainable Energy for All)が主催したものです。当協議会代表理事の酒井直樹が、パネルディスカッションに登壇し、日本のステークホルダーとしての意見表明を行いました。

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公正で包摂的なエネルギー転換という共通認識

冒頭では、SEforALLのCEOであり国連事務総長特別代表も務めるダミローラ・オグンビイ氏が登壇し、「SDG7(エネルギーへの普遍的アクセス)の達成には、単にクリーンエネルギーを増やすだけでなく、その移行の恩恵が誰に、どのように届くのかという“公正性”が不可欠である」と強調しました。

続いて、アイスランドの気候大使であるマリア・エルラ・マレルズドッティル氏が、国家戦略の中に公平性、包摂性、レジリエンスを組み込むことの重要性を政府の立場から説明しました。ここで共有されたのは、24/7 CFEは単なる技術論ではなく、社会的・制度的な転換を伴うプロジェクトであるという認識です。

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本セッションのパネルディスカッションには、電力シェアリング株式会社CEOであり、一般社団法人アワリーマッチング推進協議会代表の酒井が登壇しました。酒井は、日本を含むアジア地域での実証や実務経験を踏まえ、アワリーマッチングを「理念」から「現実の制度・市場」に落とし込む際の課題を指摘しました。

特に強調したのは、一気に理想形を義務化するのではなく、ステークホルダーの理解と合意を得ながら、時間をかけて段階的に導入する必要性です。発電事業者、小売電気事業者、需要家、系統運用者、規制当局といった多様な関係者の意見を丁寧に聞き、技術的・制度的な準備状況を見極めながら進めることが、日本においては特に重要であると述べました。

この点は、日本の多くのステークホルダーが共有している現実的な立場であり、「拙速な導入は逆に信頼を損なう」という問題意識が、国際的な場で明確に示されたことになります。

他のパネリストとの議論が示した共通課題

パネルには、EnergyTagのアレックス・パイパー氏、LDES評議会のジュリア・サダー氏、イベルドローラ・グループのミゲル・ムニョス氏、Transition Zeroのマット・グレイ氏らが参加しました。議論では、以下のような論点が浮き彫りになりました。

  • 時間単位・地域単位のクリーン電力調達を支える会計・データ基盤の整備
  • 蓄電池やデジタル技術、オープンデータの役割
  • 企業需要が再エネ投資や系統レジリエンスに与える影響
  • 公正な移行(Just and Inclusive Energy Transition)を実現するための政策連携

いずれの議論においても、24/7 CFEは「野心的な目標」であると同時に、「実務に耐える設計」が不可欠であるという点で一致が見られました。

新たに公表された報告書のポイント

この実質的年次総会の場では、「クリーンエネルギー調達による公正なエネルギー転換の推進」と題した新たな報告書もセットで公表されました。報告書によれば、24/7 CFEコンパクト署名機関は、調達、発電、支援サービスという三つの経路を通じて、合計944TWhに相当するカーボンフリー電力の実現に貢献しています。

特に注目されるのは、支援サービスが全体の約59%を占めている点です。これは、単に再エネを「買う」だけでなく、系統運用や市場設計、データ整備といった間接的な取り組みが、24/7 CFEの実現に大きく寄与していることを示しています。

フォローアップと今後に向けて

セッション後、当協議会酒井は国連24/7 CFE事務局とのフォローアップミーティングにも参加し、日本やアジアにおける実装の現状や課題について意見交換を行いました。これは、国際的な枠組みと各国の現実をつなぐ重要なプロセスです。

今回のセッションは、24/7 CFEとアワリーマッチングが「構想段階」から「実装段階」へと移行しつつあることを強く印象づけるものでした。同時に、その道のりは一様ではなく、地域ごとの事情を踏まえた丁寧な設計が不可欠であることも明確になりました。